研修・勉強会
平成29年
実施日 | 研修内容 | 講師 | 対象 |
2017.1.12 | 夜間高血糖抑制の意義 | 株式会社 三和化学研究所 | 薬剤師 |
2017.4.14 | オテズラ錠について | セルジーン株式会社 | 薬剤師 |
2017.5.26 | 肝炎治療について | ギリアド・サイエンシズ株式会社 | 薬剤師 |
2017.6.23 | 高血圧について | 第一三共株式会社 | 薬剤師 |
2017.7.11 | 検体測定室運用申し合わせ | 松嶋 | 薬剤師 |
2017.9.8 | 医療安全セミナー報告 | 江藤 | 薬剤師 |
2017.9.8 | 糖尿病と骨粗鬆症の関係 | 株式会社アステム 血管MC課福岡担当 | 薬剤師 |
2017.10.6 | 認知症患者さんへの対応・メマリー錠について | 第一三共株式会社 | 薬剤師・事務員 |
2017.10.13 | 第50回日本薬剤師会学術大会に参加報告 | 別府 | 薬剤師 |
難聴と認知症における音声コミュニケーションの重要性~医療・福祉従事者とのコミュニケーション支援の取り組み~ | ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社 中石 真一路氏 | 薬剤師 | |
2017.11.17 | 保険薬局更新時集団指導を受けて | 江藤 | 薬剤師 |
医療安全セミナー報告 | 江藤 | 薬剤師 | |
薬歴記載の留意事項の伝達講習を受けて | 江藤 | 薬剤師 | |
2016年ドレミ薬局香椎店インシデント報告 | 松嶋 | 薬剤師 | |
個人情報保護法について | 大正富山医薬品株式会社 | 薬剤師 | |
2017.11.25 | コミュニケーション力 研修 | ヒューマンアカデミー株式会社 水垣連花氏 | 薬剤師・事務員 |
平成28年
実施日 | 研修内容 | 講師 | 対象 |
2016.2.19 | インシデントレポート報告 | 松嶋 | 薬剤師 |
薬剤師の臨床判断と一般医薬品適正使用研修会 報告 | 田城 | 薬剤師 | |
2016.3.11 | 糖尿病治療薬について | 小野薬品工業株式会社 | 薬剤師 |
2016.4.11 | 医療安全セミナー 報告 | 江藤 | 薬剤師 |
処方せん入力(眼科) | 茶屋道 | 薬剤師 | |
2016.5.23 | インスリン製剤について | ノボルディスク ファーマ株式会社 | 薬剤師 |
2016.6.1 | エクオールについて | 大塚製薬株式会社 | 薬剤師・事務員 |
2016.6.24 | 精神科・耳鼻科領域の漢方薬について | クラシエ薬品株式会社 | 薬剤師 |
2016.7.22 | ベルソムラ錠、糖尿病について | MSD株式会社 | 薬剤師 |
2016.8.5 | 婦人宝、神仙太乙膏について | 小太郎漢方株式会社 | 薬剤師・事務員 |
2016.8.26 | シクレスト舌下錠について | Meiji Seika ファルマ株式会社株式会社 | 薬剤師 |
2016.9.30 | インスリン製剤の手技について | 日本イーライリリー株式会社 | 薬剤師 |
2016.10.28 | リクシアナ錠につてい | 第一三共株式会社 | 薬剤師 |
2016.11.25 | 医療安全セミナー 報告 | 江藤 | 薬剤師 |
2016.11.25 | ビラノア錠について | Meiji Seika ファルマ株式会社株式会社 | 薬剤師 |
平成27年
がんの薬物療法について
株式会社アステム
疫学:年間30万人がガンにより死亡(男性は3人に1人、女性は4人に1人) 死亡数 男性:肺、胃、大腸 女性:大腸、肺、胃 罹患数 男性:胃、肺、大腸 女性:乳がん、大腸、胃 5年生存率が悪いガン:肝臓、肺 肝がんはC型肝炎からの罹患が主 5年生存率がよいガン:乳がん、大腸がん、子宮がん がん薬物療法の種類 ・進行・再発がんに対する化学療法:腫瘍の縮小や生存期間の延長、症状の緩和を目的 切除不能例、術後再発症例など ・補助化学療法・術後補助化学療法(adjuvant chemotherapy):再発を予防とした目的 ・術前補助化学療法(neoajyuvant chemotherapy):腫瘍の縮小を図り、縮小手術を可能にする、再発を予防する、乳がんの乳房温存など
抗癌剤の種類(各論は省略)
・細胞障害性抗癌剤(化学療法剤):アルキル化剤、プラチナ製剤、植物由来物質、抗がん性抗生物質、代謝拮抗剤など
・分子標的治療薬 抗体医薬品(高分子)、チロシンキナーゼ阻害剤など(低分子)
・内分泌療法剤(ホルモン療法剤) LH-RHアゴニスト、アンタゴニスト製剤、抗エストロゲン剤、アロマターゼ阻害剤、抗アンドロゲン剤、黄体ホルモン製剤など
イフェクサーSRカプセルについて
ファイザー株式会社
効能・効果:うつ病、うつ状態 有効成分:ベンラファキシン
抗うつ薬SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)既に海外で使用実績が多くあり、GEも販売されているほど歴史が長い。
用法・用量:1日1回経口投与の徐放性製剤。1日1回37.5mgから開始し、1W後より1日1回75mgへ。維持量1日75~225mg。増量は1W以上間隔を空けて75mgずつ行う。2W目頃から効果を実感することが多い。突然の中止で軽躁、不安、睡眠障害、めまいなどが現れることがあるので徐々に減量する。
作用機序:低用量から主にセロトニン系に作用し不安感を緩和。高用量ではセロトニン系と共にノルアドレナリン(NE)系作用がより強まり無気力感、抑うつの改善。成人ADHDの治療にも期待されている。
副作用:悪心、傾眠、口腔乾燥、便秘が多くみられる。特に投与後2W以内に発生しやすいが4~5W過ぎるとほぼ解消される。悪心防止のため食後投与。
高用量でのNE作用により不眠、血圧上昇、心拍数上昇⇒300mg以上の高用量でリスク増大。225mgは超えてはならない。
投与禁忌:重度の肝機能障害、重度の腎機能障害患者
リフレックス錠について
Meiji Seika ファルマ株式会社
1.うつ病について
疫学:世界人口の3~5%が罹患 男:女=1:2
身体的症状(自律神経症状):睡眠障害、食欲不振、拒食・絶食、体重減少、倦怠感、日内変動、頭重、締め付け感、身体各部位の痛み、動悸、口渇、嘔吐感、便秘、性欲減退など精神症状:抑うつ、思考停止、決断不能、無気力、虚しさを感じる、絶望、物事を悪い方向に考える、自殺企図、気分の日内変動⇒自発的に訴えることが少なく、問診で気付くことが多い
薬物療法のポイント
・早期受診、十分な休養、抗うつ薬の服用⇒用法・用量通りの十分な量、期間(半年~1年が目安)
・効果発現まで時間がかかる⇒少量から初め徐々に増量し有効量まで増量
・副作用の説明と対処法
・表情、睡眠、食欲から薬の効果が出ていることをフィードバックする
2.リフレックス錠について
NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン神経作動性)抗うつ薬のためSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)よりも両神経からセロトニンを得ることが可能
α2受容体遮断作用:抗うつ効果(ノルアドレナリン、セロトニン放出促進)
多発副作用
眠気、鎮静:服用初期に多く1W服用すると軽減される例が多いので継続させる。ただし1W以上続く場合は変更することもある。
体重増加:不安の抑制⇒うつ病の改善で食欲増進
OTC・薬局製剤について
OTC各部門の売上上位商品と薬局製剤との比較
薬局製剤:汗止め液スプレー・パウダー、混合ビタミン剤2号A、鎮咳去痰剤9号、感冒剤13号A、健胃剤1号、アレルギー用剤3号、解熱鎮痛剤7号A
薬局製剤の特徴
1日分から購入できる:お試しが出来る、必要な分だけ購入、安価⇒試して良ければ常備薬として購入へ
症状ごとに薬を選べ、服薬指導時に相談され処方追加までは不要な場合に勧めやすい
検体測定室について
松嶋
ドレミ薬局香椎店 検体測定室測定標準作業書兼運用マニュアルに沿って運用実施法及び注意事項の申し合わせ
主な注意点
・運営責任者の薬剤師でなければできないこと:申込書兼承諾書の確認、測定結果の報告
・薬剤師でなければできないこと:血糖測定の手技説明
・受検できない要件の確認:出血性疾患患者、抗血小板薬服用患者など
・検体測定室遵守事項について:血液感染防止の徹底、健康診断との区別、診断行為の禁止、物品販売促進禁止、特定の医療機関の紹介禁止など
薬・薬連携について
① 連携体制の提案 岐阜県下呂地区薬・薬連携連絡会の取組み
薬剤師同士だけなく医師会、歯科医師会の協力も必要⇒薬剤師だけでの医療体制にしない
病院薬剤師との考え方の違い⇒コミュニケーションの重要性
② 薬・薬連携の使用ツールについて
お薬手帳:情報量が少ない、患者さんに持ち歩いてもらう必要性がある⇒啓発
CKDシール:滋賀県独自。慢性腎臓病の患者さんのお薬手帳に貼って腎機能低下を知らせる。
情報提供書:病院薬剤師⇔調剤薬局薬剤師間で必要な情報のやりとりを行う。
医師同士の診療情報提供書(紹介状)を見習う。
③ 薬・薬連携の考え方
医療安全の確保、迅速な対応、コミュニケーションの確認、確実な記録
プラビックス錠について
効能又は効果(適応症)
① 虚血性脳血管障害(CVD)(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制(処方率75%)
② 経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患(CAD)の場合(処方率20%)
③ 末梢動脈疾患(PAD)における血栓・塞栓形成の抑制の場合(処方率5%)
PADの診断はTASACⅡに基づいて行われる。PADの5年生存率は65%(大腸ガンと同率)。
3つが重なる全身動脈疾患では5年生存率23%
ジェネリック医薬品(GE)への変更時は疑義照会にて適応の確認が必要(GEによって適応が異なるため)
ジェネリック医薬品について
1. Meiji Seika ファルマ株式会社のジェネリック医薬品(GE)の取り組み
・GEでも先発品と同等の品質、有効性、安全性が求められている⇒7つの信頼性保証指針の設置
・原薬から自社規定の厳しい選定基準を設定し、品質保証を重視
・安定供給のため2ヶ所からの供給(ダブルソース化)
・在庫は他社よりも多い5~6ヵ月分を常に備蓄
2. クロピドグレル錠「明治」(プラビックス錠)
特徴:先発にない50mg錠を発売、先発よりも75mg錠は小さいサイズ設計、先発より薬価が約45%安価
薬効:適応
① 虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制⇒すべてのGEに適応
② 経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患の場合⇒オーソライズドGEと年末から明治のみ適応取得予定
③ 末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制の場合⇒先発品の再審査が終了すれば適応取得予定
将来的にはGEでも全て適応になるが、しばらくはGEへの変更時は疑義照会にて適応の確認が必要(処方率①75% ②20% ③5%)
3. トスフロキサシントシル酸塩小児用細粒15%(オゼックス細粒)
・先発と同じイチゴ味
・動物試験により先発品と同じ適応・用法を取得
ベピオゲルについて
ベピオゲル(有効成分:過酸化ベンゾイル)の概要
【作用機序】
抗菌作用:過酸化ベンゾイルは強力な酸化剤であり、分解により生じたフリーラジカルで細菌の膜構造・DNA・代謝などを直接傷害して抗菌作用を示す⇒抗菌剤と違って耐性がでにくい(抗菌剤は作用部位が1箇所だが過酸化ベンゾイルは複数個所に作用)
角層剥離作用:フリーラジカルがたんぱく質を変性させることにより、角質細胞同士の結合が弛み、角質剥離(ピーリング)が促進される
海外ではOTCで販売されている成分
【用法・用量】
1日1回、洗顔後、患部に適量を塗布
入浴後か寝る前に1FU(約0.5g)を顔全体に塗る。水分が残っていると吸収が高まるため刺激感が増すので、保湿後よく乾かしてからか、ベピオゲル塗布後よく乾燥させてから保湿する。
【取り扱い上の注意】
凍結を避けて25℃以下で保存⇒夏季は冷蔵庫で保管
【重要な基本的注意】
皮膚脱落(鱗屑・落屑)、紅斑、刺激感があらわれることがあるので、必要に応じて休薬等の適切な処置を受ける。
日光への暴露は最小限にとどめ、日焼けランプの使用、紫外線療法は避ける→ピーリング作用で肌が弱くなっているため
【副作用】
5%以上:皮膚脱落(鱗屑・落屑)、紅斑、乾燥⇒休薬してから再度使用できる例が多数
【適用上の注意】
漂白作用があるので髪、衣服に着かないように注意
眼、口唇、その他粘膜や傷口に使用しない。付着した場合は直ちに水で洗い流す。
【臨床成績】
炎症性皮疹数の減少率(最終評価時):プラセボ群に比べて有意差あり
皮疹数の減少率の経時推移:総皮疹数、炎症性皮疹数、非炎症性非疹数ともに28W後には減少率80%になりその後52W後も維持されている
長期投与可、グリンダマイシンによる耐性があっても効果あり
検体測定室ガイドラインと測定機器
ヘルス営業本部担当者
検体測定事業とは国民の健康意識の醸成や医療機関受診の動機付けを高める観点から受検者が自ら検体を採取し、測定結果について受検者が判断することで健康管理の一助となるよう支援することを目的とする事業。薬局においても検体測定室を設置し、セルフメディケーションの一役を担う役割が期待されている。検体測定室ガイドラインに則って運営しなければならない。
① 検体測定室ガイドラインの主な注意点について
・厚生労働省医政局指導課医療関連サービス室長へ開設の7日前までに「検体測定室」の届け出が必要
・運営責任者は医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師のみ
・検体の採取および採取前後の消毒・処理は利用者自らが行わなければならない
・測定の結果の報告は測定値と測定項目の基準のみで診断は行わない。利用者に対して健康診断の受診を促す。測定結果の質問に対してはかかりつけ医への受診を促す。
・測定項目は特定検診・特定保健指導の実施に関する基準に掲げる項目の範囲内とする。項目:HDL-cho、LDL-cho、TG、GOT、GPT、γ-GTP、Gul、HbA1c(総コレステロールは適応外)
・検診等の名称を入れた広告はしてはならない
・廃棄物処理、個人情報保護など関連法令を遵守する
② 承諾書・問診票
内容について読み合わせながらの確認と自筆の署名が必要
検査を受けられない方:抗凝血剤を服用している方、出血性疾患患者など
③ HbA1cおよび脂質測定のデモ
どちらも専用の試薬の入ったキットに少量の血液を入れて機器にセットすると数分で測定できる。食事の影響に注意。
平成26年度
薬局における安全体制の整備に関する研修会 報告
1.研修内容「医療安全に関するトピックス」~いまだから知っておきたいトピックス~に関して報告
・事故発生時に関するトピックス:第三者機関、院内事故調査を法案化
・スイスチーズモデル:複数層で複数の欠陥が発生し、それらの欠陥が同時期に重なることで発生する有害事象
・RCA根本原因分析:有害事象の背景にある原因を解明するプロセス→再発防止策
・患者参加型の医療安全→患者さんに医療行為中の注意を伝える
・医療事故は施設の大小にかかわらず発生する可能性があるため他施設の事例から学ぶ→ヒヤリハット事例分析集などを参照する
2.ドレミ薬局における薬局ヒヤリハット事例分析事業への参加状況とインシデントレポートの活用について意見交換
インシデントレポートの有効性:インシデント+背景から改善策を講じ、当事者のみだけでなくスタッフ全員に周知させることで同じ過ちを繰り返さない
統合失調症、うつ病について
大うつ患者において初期の抗うつ薬治療
抗うつ剤を1~2週間後に増量しても効果が得られない
↓
増強治療 1~2週間かけて追加
第一選択薬:リチウム剤、クエチアピン、アリルプラゾール
第二選択薬:オランザピン
切り替え 6~9週間かけて抗うつ剤を減量しアリルプラゾールに切り替える
抗精神病薬の分類
第一世代 | 第二世代 | 第三世代 |
定型 | 非定型 | 部分作動薬 |
クロルプロマジン ハロペロドール フルフェナジン |
リスペリドン オランザピン クエチアピン ペロスピロン |
アリルプラゾール |
【抗精神病薬の副作用】
高プロラクチン血症、性機能障害→言えない、言わない(特に男性)、月経機能障害:無月経・不妊・月経異常、骨粗鬆症・骨密度減少→転倒による骨折で寝たきりのリスク、乳房:乳汁分泌・乳房肥大・乳がん、心血管系疾患:低エストロゲンによる心血管への悪影響 など
特に虚血性心疾患のリスク上昇のため体重増加、脂質異常は投与中止になることもある
【エビリファイ(アリルプラゾール)】
・うつ病・うつ状態においては既存治療で十分な効果が認められない場合に限って投与可
・D2、セロトニン1Aに対し部分アゴニスト、セロトニン2Aに対しアンタゴニストの両作用をもつ
・鎮静作用が少ない
【切り替えおよび併用のメリット】
他の抗精神病薬でみられる体重増加、高プロラクチン血症、脂質異常、境界型糖尿病の副作用の改善において有用というエビデンスがある。
ベルソムラ錠について
日本人の不眠症
日本人の3人の1人に睡眠障害があるといわれ、アルコール(寝酒)で解決していることが多い。快眠ジャパンHPにて不眠度判定、不眠の種類・治療について解説がある。
ベルソムラ(成分名:スボレキサント)について
作用機序:世界初のオレキシン受容体拮抗薬。ベルソムラはオレキシン受容体への結合を阻害し、過剰に働いているシステムを抑制し、脳を生理的に覚醒状態から睡眠へ移行させる。
オレキシン:視床下部ニューロンから生産されるペプチドで、起きている状態を保ち安定化させる(覚醒を維持する)脳内物質
特徴
入眠効果+睡眠維持⇒入眠作用と中途覚醒抑制効果のため、頓用でも効果あり
ベンゾジアゼピン系睡眠薬で問題となっている副作用(持越し現象、反跳性不眠、退薬症候)がほとんどみられない
副作用
主なものは傾眠、頭痛、疲労(いずれも数%)、致死的副作用はみられていない
用法・用量
常用量:18歳以上65歳未満:20mg、65歳以上:15㎎、原発性不眠に対し就寝直前に経口投与。高用量は承認外。
食後投与は空腹時投与に比べ、投与直後のスボレキサントの血漿中濃度が低下する恐れがある
他の不眠症治療薬と併用したときの有効性及び安全性は確立されていない→他剤併用がない患者に投与
製剤的注意
光、水に不安定だが有効成分が壊れることはない。割線なしのため半量投与は不向き。
併用禁忌・注意
併用禁忌:CYP3A4を強く阻害する薬剤⇒スボレキサントの代謝酵素であるCYP3A4を強く阻害し、スボレキサントの血漿中濃度を顕著に上昇させる
併用注意:アルコール(精神運動機能の相加的低下)、中枢神経抑制剤、CYP3A4を阻害する薬剤、CYP3A4を強く誘導する薬剤、ジゴキシン(スボレキサントはP糖蛋白阻害作用がある)
救急絆創膏およびテーピング勉強会
救急絆創膏 ケアリーヴについて
①モイストヒーリングとは
⇒傷口を乾燥させないようハイドロコロイドなど滲出液で湿潤状態を保ち、傷をきれいに早く治す
傷を治す成分を含んでいる滲出液をガーゼ含まれたハイドロコロイドにより傷口に留めることで湿潤環境を作り、自然治癒力を高めて傷を早くきれいに治す
②適応・使い方
適応:切りキズ、すりキズ、さしキズ、かきキズ、あかぎれ、さかむけ、靴ずれ等の創傷及び軽度のやけど(赤くなった程度で水ぶくれがないもの)
不適応:感染した傷(痛みが強い、膿があるなど)⇒病院で処置を受ける
感染を起こす可能性がある傷⇒深い傷、ガラス・木片・砂・ホコリが入ったもの、動物によるもの(咬み傷、引っ掻き傷)⇒病院で処置を受ける
深い刺し傷、にきび・湿疹・発疹・虫刺され、目の周囲、粘膜(顔には使用できるが目の周りは避ける)、3歳以下の子供への使用
使用法:傷を水洗いしてそのまま貼る。(消毒剤、傷薬は塗らない)
初めのうちは1日1回貼り替え、次第に2~3日に1回でよいが、傷に感染がないか確認を行う。貼り替えの際は1度、水洗いをして水分を拭き取ってから貼る。貼り替え時にゲル状のものが淡黄色で粘りがあり臭いがする場合は、感染した膿の可能性があるため、病院での受診が必要。
テーピングについて
①製品について
キネシオロジーテープ(セラポア) | 非伸縮(固定用)テープ | 伸縮(固定用)テープ | |
特徴 |
適度な伸縮性で筋肉や関節の運動をサポートする
柔軟性が高く、関節にフィットする |
しっかりと固定し関節運動を制限(伸びないタイプ)
コットン素材で通気性・通湿性に優れている ゴム系粘着剤を使用しはがれにくい |
適度な伸縮性で関節を制限する(伸縮タイプ)
柔軟性が高い 動きやすさ優先 |
使用法 |
筋肉に沿って貼ることで筋肉の活動をサポートして関節運動をスムーズにしたり、関節に巻くことでケガの予防や再発防止・応急処置にも使用
|
関節の動きを制限したり、患部の圧迫・肉離れや筋肉の損傷などの応急処置にも使用
|
関節運動の大きい部位や柔軟性を必要とする膝・肘・肩への使用が適している
圧迫感が少ない 関節運動の制限や患部の安静固定などに適している |
その他のアイテム
・スポーツバンテージ(伸縮性スポーツ包帯・自着性包帯):適度な伸縮性があり、急な応急処置や圧迫・固定に向いている
・アンダーラップテープ:テーピング時の皮膚の保護に使用
・粘着スプレー:アンダーラップテープのズレ防止やテーピングの粘着力の強化
・リムーバースプレー:アンダーラップや固定テープの除去
②使い分けのポイント
テープごとに特徴と用途があるので、使用者の症状・目的・部位に合わせて使い分けることが効果的な使い方につながる
③実演
突き指:曲げて痛い→外側に固定(曲がらないようにする)
伸ばして痛い→内側に固定(伸びないようにする)
内反の捻挫、立ち仕事などによる疲れの予防、足裏へのテーピング、外反母趾、巻爪
C型肝炎治療薬について
C型肝炎治療薬 ダクルインザ、スンベプラ併用療法の特性
【作用機構】
C型肝炎ウイルス(HCV)の複製に必要な2つの非構造蛋白を阻害することで相加的あるいは相乗的に働き、HCVのライフサイクルを複数の異なる段階で阻害する
【効能又は効果と特徴】
従来の治療法:インターフェロン(INF)+リバビンorシメプリンで89%は完治(最後までINF治療を実施できた場合)。ただし、INFはジェノタイプ2a、2bでないと効果が現れないが、日本人は1bが70%。
①ダクルインザ・スンベプラの併用療法は、日本初の経口剤のみによるセログループ1(ジェノタイプ1)のC型肝炎またはC型代償性肝硬変における次のいずれかのウイルス血症の改善に対する治療法であり、優れた有効性が確認されている
1)INFを含む治療法に不適格の未治療あるいは不耐容性の患者
⇒不適格者:貧血、うつ病、高齢、その他合併症のためINFの投与ができなかった患者
不耐容:副作用発現により治療を中止した患者
2)INFを含む治療法で無効となった患者:INFの治療を受けたが効果不十分のためHCV RNAが定量下限未満(検出せず)にならなかった患者
②ダクルインザ・スンベプラの併用療法によるSVR24達成割合は、年齢、性別、ベースラインのHCV RNA量、IL28遺伝子型等の背景因子に関わらず、良好な有効性が確認されている
③副作用が少ない
高血圧ガイドライン2014について
高血圧ガイドライン(JSH):日本高血圧学会が5年に1度制定している
【血圧測定と高血圧診断手順】
・家庭血圧をより重視している
・日内変動性の評価→朝と夜での違いなど
・日間変動性の評価→日によってばらつきがある
・自由行動下血圧:店頭など外出先で測定した場合
【家庭血圧測定方法】
・ 使用機器:家庭血圧測定時はカフ式を推奨。手首式では心臓のあたりまで上げて測定、指先タイプは推奨できない
・ 測定回数:1機会につき原則2回測定し、その平均値を取る⇒何回も測るとかえって不正確になる
・ 薬剤師としての工夫:測定器の購入時などに正しい測定法、血圧手帳の記入の仕方を指導する
【高血圧の基準と降圧目標】
・高血圧の基準は2009年と変更なし
降圧目標の変更点:高齢者が前期(65~74歳)と後期(75歳~)に分かれ、前期は若者・中年と同じ目標へ
【リスク層別化】
『正常高血圧』の項目削除し、リスク層と高血圧重症度によってリスクを層別化している
リスク第1層:メタボリスク3つまで
リスク第2層:メタボリスク3つ以上
メタボリックシンドローム(Met)リスク:内蔵型肥満、高血糖、脂質異常、高血圧
【第一選択薬の選択法】
・β遮断薬の削除し、残り4つによる治療へ(単剤、併用)
・併用の関係も五角形(5つ)から四角形(4つ)に変更へ
在宅訪問薬剤業務について
【介護保険の基礎知識】
・サービスの対象者…40歳以上の被保険者
65歳以上(第1号被保険者):全員に被保険者証が交付されるが、要介護・要支援認定された場合にサービスが利用可(介護保険証をもっているだけではサービスが受けられない)
40歳以上65歳未満(第2号被保険者):要介護・要支援の認定を受けた場合のみ被保険者証が交付される。
※老化が原因とされる病気(特定疾病)により、要介護・要支援に認定された場合に限って、サービスが利用可
→ ③主治医意見書→④介護認定審査会(二次判定)→⑤要介護・要支援の認定→⑥ケアプランの作成
→⑦サービス開始
①~⑤までの期間はおよそ1ヶ月が目安 [在宅や施設でサービスを利用する場合の費用の目安] 自己負担は原則としてサービス費用の1割
介護状態によりサービス費用が異なり、住まいのエリア、サービス内容により支給限度の単位が変わる
薬剤師による居宅療養管理指導は支給限度額に含まれない
【スタート前に知っておきたいこと】
①対象者の確認
・在宅訪問薬剤管理指導業務の対象となる患者は、医師の指示があり、在宅で療養し、通院が困難な患者
・在宅サービス
医療保険:在宅患者訪問薬剤管理指導料
介護保険:居宅療養管理指導費
・要介護(要支援)認定を受けている患者は、介護保険によるサービス提供となる(介護保険優先)
⇒間違って医療保険で請求すると不当請求となってしまう
②施設の区分・対象となる施設
在宅訪問を行う先:一般の居宅(個人宅)、高齢者向けの住宅など施設の種類によって保険請求の可否や方法が異なる
→特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、介護老人保健施設では居宅療養管理指導(介護保険)と訪問薬剤管理指導(医療保険)が共に取れないので注意
③介護関連事業者との関わり
ケアマネージャー:包括支援センター、介護支援事業所
訪問看護師:訪問看護ステーション それぞれの職種とのコミュニケーションが大事
ヘルパー:ヘルパーステーション
ソーシャルワーカー:病院の地域連携室、医療連携室
・医師からの訪問指示
在宅訪問薬剤管理指導(居宅療養管理指導)を実施するには、必ず医師からの指示が必要⇒「訪問指示」の旨を記載された処方せんや口頭指示(別途指示書は不要)。口頭指示の場合はその旨を薬歴などに薬剤師が記載する。
・訪問薬剤管理指導依頼書、患者情報提供書(診療情報提供書) 必須ではない
・薬学的管理指導計画書
・訪問薬剤管理指導記録簿 [関係者への報告義務] 指示のあった医師へは毎回報告書を提出する。平成24年4月からは介護保険の居宅療養管理指導ではケアマネージャーへの報告も義務となった。 [訪問・薬剤交付、服薬指導] 残薬状況、保管状況、併用薬:服薬状況が悪ければその改善策の検討、調剤方法の確定、使用している薬への理解度の向上、患者の状況から薬効・副作用のチェック、体調(食事・排泄・睡眠・運動・認知機能など)を把握し、薬の影響などアセスメント等を行う [請求:要介護者 2か所に請求する] ⇒ 介護報酬(介護保険:居宅療養管理指導費及び加算)+調剤報酬(医療保険:調剤基本料、調剤料、薬剤料、特定保健医療材料料) 同一日・複数患者・同一建物かによって請求点数が異なるので注意 [その他 必要な体制等] ・在宅患者調剤加算(処方せん受付1回につき)
・地方厚生(支)局長に対し在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨の届出をしている
・当該加算の施設基準に係る届出時の直近1年間の在宅患者訪問薬剤管理指導料等の実績が10回以上必要
・緊急時の開局時間以外の時間における在宅患者に対する調剤並びに薬学的管理及び指導に対応できる体制の整備(サポート薬局との連携による対応も可)
・医療材料及び衛生材料を供給できる体制
・麻薬小売業者の免許を取得し、必要な指導を行うことができる体制
田中耕司先生(かしい心療内科クリニック院長)への質問形式勉強会
日頃、薬剤師が疑問に思っていることをリストアップし、一問一答の形式で田中先生にご教授いただきました。その一部を抜粋して掲載。
【月経前症候群に対する漢方薬の有用性について】
芍薬甘草湯は一般に鎮痛作用を期待して処方するが、精神症状の強いPMDDの強い患者に処方。
生理開始5日前からイライラが治まるまで服用するとよい。手応えのある印象。
PMDD:Premenstrual Dysphoric Disorde
月経前不機嫌性障害、月経前不快気分障害。PMSに比べてより精神症状又は身体症状が重いもの。
月経周期の黄体期と関連して診断され、正常な月経周期をもつ女性の3~8%に発症。
身体症状:下腹部痛、腰痛、頭痛、めまい、吐き気
精神症状:イライラ、憂鬱、集中力の低下、記憶力の低下、孤独感、不安感。重症では暴力、自殺企図、アルコール・薬物依存
【カウンセリングについて】
病気に対して心理カウンセリングを保険診療の適応で行う。だいたい1人40分~1時間程。
カウンセリングは拘束時間や費用など患者個人にかかる負担が大きい。
2. 患者が契約に基づいて行うことに同意する場合
3. 特殊な治療プログラムに沿うことが理解できる ⇒行動療法などを実行できる [カウンセリングが必要な患者の条件] 1. 自分自身に心理的問題があることを認識している
2. 心理カウンセリングを改善するために意欲的に取り組める
3. 自身の心理状態や思考を言語化できる
4. 時間や態度などマナーを守れる⇒遅刻、無断キャンセル、身勝手な会話・態度、暴力をふるう、無理な要求(身体的接触など)をしない [薬物治療によりカウンセリングが有効な場合] 人生の岐路(進路、就職、結婚など一過性の出来事によるもの)、社会不適合(会社で浮いてしまう、意欲が湧かないなど)、摂食障害、性同一性障害など
薬物治療+カウンセリング:強迫性障害
・かしい心療クリニックにて カウンセリングを行わない症例
薬物依存関連(覚せい剤、麻薬など)、アルコール依存症、認知症、精神遅滞、発達障害⇒心理カウンセリングの範囲ではなく、療育・社会的サポートが必要
平成25年度
SGLT-2阻害薬 スーグラ錠(アステラス/MSD)
【SGLT-2とは?】
腎臓糸球体でろ過された糖を近医尿細管で血液中に再吸収する際に働く運び屋
SGLT-2は主に腎臓に存在する
*通常、99%以上の糖は、腎臓の近医尿細管で再吸収される
⇒SGLT-2を阻害すれば、糖の再吸収を抑え、高血糖が改善されるのでは?!
SGLT-2阻害薬は全てのSGLT-2を阻害するものではなく30~50%を阻害する
【SGLT-2阻害薬の効果】
★DPP-4阻害剤と同等の効果が期待できる★
① 血糖値、HbA1c値の改善効果
② 単独使用では低血糖の危険性が少ない(1%低血糖可能性)
③ 体重減少効果
④ 長期使用した場合、インスリン抵抗性、インスリン分泌不全を改善(糖毒性改善)の期待
【SGLT-2阻害薬の副作用】
① 尿路・生殖器感染症 :尿中糖濃度上昇による易感染
5%前後の発症率(日本)、女性に多い
② 頻尿・多尿・脱水 :糖の浸透圧性利尿作用による
こまめな水分摂取を心掛ける
③ 血中ケトン体の増加 :脂肪の代謝物であるケトン体が増加(糖の代わりに脂肪をエネルギー源とする為)
【SGLT-2阻害剤の向き不向き】
●適している方
・肥満
・罹患期間が比較的短い(インスリン分泌が比較的保たれている)
・腎機能低下している(糸球体ろ過機能低下の為)
●適していない方
・痩せ型 (⇒筋肉などの蛋白がエネルギー源として消費され筋力低下)
・後期高齢者(脱水症状のリスク、易尿路感染症)
・脳血管障害の既往歴がある(脱水による脳血流量低下のリスク増大)
世界標準のがん疼痛治療ガイドライン WHO方式疼痛治療法について
がんの痛みは高率に発症する症状のため、比較的初期から緩和することで予後が伸びる
【がんの痛みの特徴】
末期では自覚症状として70%で起こり、持続性でいつ終わるか不明による恐怖感を伴うトータルペイン。しかし、痛みはオピオイドに対して大半は反応するのでコントロールが可能。
【WHO方式がん疼痛治療法】
[痛み治療の目標設定]
第一目標:痛みに妨げられない睡眠時間の確保
第二目標:安静にしていれば痛みが消えている状態の確保
第三目標:起立したり、身体を動かしたりしても痛みが消えている状態の確保
[鎮痛薬使用の基本原則]
① 鎮痛薬は経口的に投与:高い有益性、自立性を保つ ⇒ QOLの向上
② 時刻を決めて規則正しく鎮痛剤を投与:徐放製剤の活用、痛みの予防 ⇒ QOLの向上
③ 除痛ラダーに沿って効力の順に鎮痛剤を投与:痛みのコントロールを正しく行う
④ 患者さんごとに個別的な量で鎮痛薬を投与:痛みが消える量は個人差が大きい(標準投与量はない)
低量(鎮痛無効量)では吐き気、便秘の副作用のみ現れる、過量では眠気→呼吸抑制
レスキュードーズは定時量のオピオイドの1日量の1/6を1回量とする
⑤ その上で細かい配慮を行う:最適な疼痛コントロールが維持されるように、痛みの変化を継続的にモニタリングする
【オピオイド鎮痛薬の副作用】
主に投与初期、増量時:吐き気・嘔気、眠気、ふらつき・めまい、せん妄、かゆみ、発汗異常、呼吸抑制
主に反復投与時:便秘、排尿障害
吐き気・嘔気:モルヒネ投与患者の30%に起こる副作用。制吐剤の予防投与で抑制できるが、耐性もできやすい。
眠気:呼吸抑制にならないように注意。基本的には経過観察だが、腎機能低下患者は注意。
便秘:オピオイドを反復投与されているほぼ全患者に発現する⇒必ず緩下剤の投与(比較的多量)
川口博先生(かわぐち耳鼻咽喉科院長)への質問形式勉強会
日頃、薬剤師が疑問に思っていることをリストアップし、一問一答の形式で川口Dr.にご教授いただきました。その一部を抜粋して掲載。
Q.菌検査まで実施する際の判断基準は?
A.(大人)真菌、MRSA、緑膿菌との見分けをつけるため。特に中耳炎を繰り返す人。高齢者からは緑膿菌が検出されることがある。
(小児)ペニシリンで治らない場合(ペニシリン系の内服で半分は治療可)、長引く場合(1ヶ月以上鼻水が続く、中耳炎を反復する)、他科から来た場合。
例えば耳漏において、沢山の菌が感染しているであろう場合でも、一種類の菌しか検出されないことがある。また、採取する部位(手前、奥など)、乾燥しているなどの条件によっても検出される菌がちがうことがあるため、菌検査のみによって薬を変更することはあまりない。
Q.慢性副鼻腔炎の治療効果は?(マクロライド長期療法の有効性、手術による完治は期待できるか?)
A.3ヶ月継続することで70~80%は治る。続ける方が有効性は高い。まず2週間続けての効果を確認 ⇒ 4週間処方へ。更なる継続はPt次第。
ただし6歳以下では有効性なし(成長途中のため鼻腔が細く鼻汁の排出が上手くできない場合、成長に伴って改善することもある)。
Q.ステロイド漸減投与について、昼以降に受診した場合の服用開始は?昼や夕開始の場合、減量時の落差が大きくなってもいいか?
A.用法が分からなくなる場合は次の日の朝からスタートしても良い。1日くらい投与が遅れても有効性には変わりなし。夕食後からの開始でももちろん可。
Q.突発性難聴でステロイド内服を初回より使用する場合と、そうでない場合の判断基準は?
A.発症後2週間以内ならステロイドは有効。ひどい場合は入院勧奨(ただし外来、入院ともに治療法は変わらないことが多い。安静を確実に保てることの違いくらい?)。
⇒2~3日アデホス、メチコバールで様子をみてもらう(入院するかもこの間に考えてもらう)
⇒再受診時 入院希望:紹介状の発行 外来:ステロイド漸減療法
※聴力検査は別の日に2回くらいしないと本当に聴こえていないかの信頼性が低い(聴こえていない耳をカバーしようと正常な耳を使っていることがあるため)
Q.抗アレルギー薬(内服、点鼻)の選択基準は?
A.抗ヒスタミン薬:自己調整してもよいと伝えている。1~2週間試して副作用がなければ1ヶ月処方へ。
朝起きがけがつまる → 夜のみ服用(クラリチンも夜でも可)
自己調整したい → 1日2回を1回(夜のみ)、1/2錠でも可、
眠気が嫌な人 → アレグラ (アレロック、タリオンは眠気あり、10人中1~2人が眠気を訴える)
小学生へのクラリチン、アレロック錠は成人量(5mg)では出さないことにしている(2.5mg4錠/日で処方)。
抗LT薬:強い鼻閉がある場合。LTは鼻茸からたくさん放出される。薬代が高くなることも伝えている。効果不十分ならばティレグラを処方。
点鼻薬:基本的にはPtに選んでもらっている。Ptには鼻の通りが良くなっても1日1回は毎日続けなさいと言っている。(噴霧回数も1回でもよい。1日2回のも1日1回になってもよい。とにかく毎日継続を。)
大人:1日1回を選ぶ人が多い(ナゾネックス、アラミスト)
+プリビナ:つまりを取りたい人(ただし1度使うと毎回希望するケースが多い)
刺激がイヤ、垂れるのがイヤ:パウダータイプ(リノコート、エリザス)
どの薬も効き目に個人差が大きいので、まず1~2週間試す。
レストレスレッグス症候群(RLS)治療剤としてのニュープロパッチ(ロチゴチン経皮吸収型製剤)について
レストレスレッグス症候群:下肢静止不能症候群
■診断基準
① 足を動かしたいという強い欲求が不快な下肢の異常感覚に伴って、あるいは異常感覚が原因となって起こる
② その異常感覚が安静にして、静かに横になったり座っている状態で始まる、増悪する
③ その異常感覚は運動によって改善する
④ その異常感覚が日中より夕方・夜間に増強する
■補助診断
① 家族歴がある
② ドパミン作動性薬剤治療に対する反応性がある
③ 周期性四肢運動(PLM)がある
■有病率
日本における有病率は2~5%、加齢に従い上昇しピークは60~70代、女性に多い
ニュープロパッチの特徴
① 1日1回貼付の経皮吸収型製剤(貼付剤)であり、24時間安定した血中濃度を維持*定常状態になるのに2日間要する
② RLS患者において夜間の症状に加え日中の症状も改善*日中RLS55%(2人に1人の割合で起こっている)
【用法・用量】
通常成人にはロチゴチンとして1日1回2.25mg/日から始め、以後経過を観察しながら1週間以上の間隔をあけて1日量として2.25mgずつ増量し維持量(標準1日量4.5mg~6.75mg)を定める。なお年齢、症状により適宜増減できるが、1日量6.75mgを超えない
【副作用】
・適用部位掻痒症、紅斑 ⇒保湿剤、ステロイド軟膏で治療
・悪心、嘔吐、傾眠、頭痛など
【警告】
前兆のない突発的睡眠及び傾眠が見られることがあるので、本剤を貼付中には
自動車の運転、機械の操作、高所作業等危険を伴う作業には従事させないように指導する
【RLS生活指導】
・カフェイン、アルコールは控え、適度な運動を心掛けるように指導する
【その他】
・剥がれてしまった時の対応は?
⇒そのまま貼付しても良いし、新しい貼付剤を別の場所に貼り替えても良い
・悪心等などのSEが起こった時の対応は?
⇒貼付剤を剥がすと、直ぐに血中濃度が下がるので剥がす(凡そ2時間)
レルベアについて
【レルベアの特徴】
①新しいICSによる強い抗炎症効果が期待
②24hrの効果で日常生活の改善
③1アクションで吸入できるデバイス
①ICSをフルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)に変更
アドエア:フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)
点鼻ではフルナーゼ(1日2回)⇒アラミスト(1日1回)
*ICS:吸入ステロイド inhaled cortic osteroid
フルチカゾンフランカルボン酸(FF)の特徴
気管支上皮細胞に長く留まり、強い抗炎症作用が期待できる⇒24hrに1回の吸入で可
②朝・夜いずれの投与でも呼吸機能改善効果を24hr維持
⇒どの時間帯でも1日1回の投与でよい
<最近発売された喘息治療薬>
名称 | 薬剤 | 適応 | 剤刑 |
フルティフォーム | プロピオン酸フルチカゾン ホルモテロール |
喘息 | エアゾール |
ウルテイブロ | グリコピロニウム インガタテロール |
COPD | ハンディヘラー |
レルベア | フランカルボン酸エステル ビランテロール |
喘息 | ドライパウダーインヘラー |
③1アクションで吸入できるデバイス
カバーを開けるだけで薬がセットされていて、すぐに吸うことができる。もし、そのままカバーを閉じてしまっても、次回、2回分を吸入されないようになっている。カウンターの残数目盛が大きい表示になった。
吸入後は副作用防止のため必ずうがいを!!
吸入感:わずかな乳糖の甘みや粉の感覚がある。1回量がわずかであるので、吸入出来たか不安な場合はそのまま1~2回吸入を繰り返してもよい(×カバーを閉じてしまうと2回分となってしまう)
副作用:口腔カンジダや嗄声⇒うがいの励行により予防が可能
糖尿病治療薬について
糖尿病:人口の6%が罹患 そのうち95%がII型糖尿病
インスリン抵抗性
インスリン分泌低下
} インスリン作用不足の悪循環
血糖コントロール目標 日本糖尿病学会 糖尿病診断指針2012-2013
① グリコヘモグロビン HbA1c値 過去1~2ヶ月の血糖値の平均状態
血糖正常化を目指す目標値:6.0未満
合併症予防のための目標値:7.0未満 ⇒網膜症の予防
治療強化が困難な際の目標値:8.0未満 ⇒低血糖症のリスクがある人(高齢者など)やコントロール不良な場合
② 空腹時血糖値および75gOGTTによる判定区分
OGTT 経口ブドウ糖負荷試験(oral glucose tolerance test)
⇒WHOの基準に従い、75gのブドウ糖を負荷し、2時間後の血糖値を測定して診断。糖尿病と判断される基準は2時間後の血糖値で200mg/dl以上
③ その他の検査の例
グルコアルブミン(GA)
⇒過去の血糖値の変動を推定できる指標の一つ。アルブミンのt1/2が20日前後であるため1~2週間前の血糖状態を知ることができる。基準値12.3~16.5
フルクトサミン(FRA)
⇒血液中のタンパク質と結合してできる物質で血糖の濃度に比例する。t1/2が10日~2Wのため過去2Wの血糖コントロールの指標となる。溶血性貧血などでHbA1cの測定が困難な場合の代用とすることがある。
基準205~280μml/L以下が目標。糖尿病治療中であれば320μml/L以下が目標。450μml/L以上であれば血糖コントロールが全くできていない。
1.5AG(1.5アンヒドログリシドール)
⇒ブドウ糖に次いで血液中に多く含まれる糖。1.5AGは糸球体でろ過されるが、そのほとんどが尿細管で再吸収され、1日の尿排泄と経口摂取量がほぼ均衡するため、血液中の濃度はほぼ一定している。糖尿病などで尿糖が増加すると尿中への排泄が増加し、血中濃度が低下する。このため、軽症糖尿病の過去数日間の血糖コントロールの指標となる。
基準 男:15~45μg/mL 女:12~29μg/mL 男女とも13μg/mL以下で血糖コントロール不良
非プリン型選択的キサンチンオキシダーゼ阻害剤
-高尿酸血症治療剤-
フェブキソスタットに次ぐ2成分目の選択的XOD阻害薬「尿酸生成抑制薬」
(1)アロプリノールに対して非劣性。
(2)主に肝で代謝され主代謝物は不活性体として排出。
*軽度~中等症の腎機能低下例においても用量調節不要
(3)1日2回の服用により尿酸の日内変動が穏やか。
(4)作用機序は不明だが、尿アルブミン/クレアチニン比の低下が認められることから腎保護作用も期待。
用法・用量
●1回20mgより開始し、1日2回朝夕に経口投与。
その後、血中尿酸値を確認しながら必要に応じて増量する。
維持量は通常1回60mgを1日2回とし、患者の状態に応じて適宜増減。
最大投与量は1回80mgを1日2回とする。
★アロプリノールからの切り替えの場合必ず1回20mgから開始しないといけないのか?
⇒ 判断が難しい。1回20mgから開始していない例もある。
1回20mgから開始しても増量することなく尿酸値がコントロールされている例もある。
禁忌
●メルカプトプリン水和物(商品名ロイケリン)、アザチオプリン(商品名アザニン、イムラン)
XOD阻害作用により骨髄抑制などの副作用が増強される。
【トピックス】
スイニー(DPP4阻害薬):2013/12/1~長期投与可能 LDL-C低下作用が認められる。
GLP-1受容体作動薬 リスキミア皮下注300μgについて
【リキスミアの特徴】
(1)国内で唯一、基礎インスリンとの併用が認められたGLP-1受容体作動薬(2013/6時点)
(2)1日1回の投与で、優れた食後血糖(PPG)低下作用が認められ、HbA1cHbA1cを改善
(3)臨床試験において、基礎インスリンとの併用により、PPG、HbA1cを改善
(4)1日1回朝食前1時間以内の投与であり、基礎インスリンと同じタイミングで投与可能
(5)ランタスと同じソロスタータイプのペンを使用した製剤
(6)主な副作用は悪心、低血糖、嘔吐、食欲不振。重大な副作用として低血糖、急性膵炎、
アナフィラキシー反応、血管浮腫が現れることがある。類薬の重大な服用さとして腸閉塞あり
HbA1c7.0%未満の達成には、空腹時血糖(FPG)と食後血糖(PPG)、両方の改善が重要
GLP-1受容体作動薬と基礎インスリンとの併用が治療方法の1つとして推奨される
基礎インスリンで空腹時血糖をコントロールし、GLP-1受容体作動薬併用で食後血糖を下げる。
【リキスミアの薬理作用<GLP-1作用>】
胃内容排出の抑制(食欲低下)
グルカゴン分泌抑制
インスリン分泌促進
体重への影響が少ない
【リキスミア奏効例】
(1)インスリン投与しても目標HbA1cを達成しきれない
(2)食後血糖コントロールが不良
(3)体重を増加させずに治療をしたい
(4)頻回注射による治療が困難
*日本人にはGLP-1受容体作動薬の有効例が多い
【リキスミアの用法用量】
●1日1回の投与(朝食前、基礎インスリンと同じタイミングでの使用可能)
夕食後高血糖を改善目的で夕食前も可能だが、翌日昼までの効果はうすい
朝食前投与から夕までの時間が短いので十分な効果が期待できる
1回の投与で吐き気などのSEが軽減される
●1日10μgから開始し、1w以上の間隔で5μgずつ、1日20μgまで漸増
(維持量は10μgでも15μgでも20μgでも良い、1日最大20μgを超えない)
*GLP-1受容体作動薬による悪心・嘔吐は迷走神経によるもので、1,2ヶ月で治まってくる
*朝食前1時間前に投与すると胃の動きが止まった状態で食事を摂る事になるので吐き気が
抑えられる(食事の途中で胃の動きが止まると吐いてしまうことがある)
抗精神病薬エビリファイについて
【エビリファイの特徴】
・作用機序:DSS(ドパミン・システム・スタビライザー)・・・どれだけ投与してもドパミンD2受容体の活性化が30%に留まる。
⇒陽性症状(受容体活性が亢進している状態)では30%までに活性を抑え、陰性症状(受容体活性が低下している状態)では30%まで高めることで、ドパミンの状態を安定させる。
〈統合失調症・双極性障害における作用機序〉
・黒質線条体神経路(ドパミン受容体多い):
運動制御系で、抗精神病薬の錐体外路症状(EPS)はこの系への抗ドパミン作用により起こる。⇒エビリファイはパーシャルアゴニストの為、EPSの発現率が低い。
・中脳辺縁系神経路(ドパミン受容体多い):
統合失調症の陽性症状や双極性障害の躁症状を示す患者では、この神経路の活動が亢進していると考えられている。⇒エビリファイにてそれらの症状改善効果を示す。
・中脳皮質神経路(ドパミン受容体少ない):
統合失調症の陰性症状を示す患者では、この神経路の活動が低下していると考えられている。⇒エビリファイにより陰性症状の改善効果を示す。
・漏斗下垂体神経路:
この神経路が遮断されるとプロラクチン分泌抑制作用が抑えられ、プロラクチン分泌レベルは上昇する。⇒エビリファイはパーシャルアゴニストの為、プロラクチン分泌を亢進させない。
〈うつ病・うつ状態における作用機序〉
・ドパミンD2・D3受容体、5-HT1A受容体のパーシャルアゴニスト作用及び5-HT2A受容体アンタゴニスト作用により、うつ病・うつ状態を改善する。
⇒うつの症状はNA(無気力、興味喪失)→セロトニン(緊張、過敏)→ドパミン(快楽消失)の順に発症。
※治療抵抗性うつ病の適応外となるため、SSRI、SNRIなどの使用後に効果が見られない場合の使用となる。
・線条体のドパミンD2受容体が抗精神病薬により75~80%以上占拠されるとEPSが発生。65~70%以上占拠されていないと抗精神病効果が現れない。⇒エビリファイはパーシャルアゴニスト作用によりEPSを起こしにくい。
・ジプレキサは躁を抑える力が強いが過鎮静を起こす⇔エビリファイは過鎮静を起こしにくい。
・エビリファイ服用1週後までに改善される症状:外見に表出される悲しみ、言葉に表現された悲しみ、制止、感情をもてないこと、自殺思考
・エビリファイ服用2週後までに改善される症状:悲観的思考
・エビリファイ服用3週後までに改善される症状:食欲減退
【副作用】
・アカシジアは服用後2週以内に80%が発現 ⇒ エビリファイによるアクティベーションとアカシジアの見極めが困難。エビリファイにより鎮静→活動量の増加により、ソワソワが起こることも。この場合は増量される。
・不眠(5%以上):朝食後服用にて回避。
・体重増加(5%以上):糖・脂質代謝の異常はなく、抗うつ薬の併用もあることから、意欲が出て食欲が増したための体重増加と見る向きもある。
【その他】
・2013年6月に「うつ病・うつ状態」の効能追加。但しSSRIまたはSNRIとの併用が条件(エビリファイ単剤投与での有効性は確認されていないため)。
・添付文書に「定常状態に達するまでに約2週間を要するため、2週間以内に増量しないことが望ましい。」とあるが、実際にはもっと早く定常状態になる為、1週毎に増量しているのが現状。なお減量は2~3ヶ月くらいかけてゆっくり行う。
・薬効が切れるまでに60日間、血中濃度が安定するのに2週間、Tmax=3時間
うつ病について
【うつ病に関わる日本の現状】
・日本人の14~15人に1人(女性は10人に1人)がうつ病にかかる。
⇒そのうち20~30%は慢性化・難治性
辛い ← 憂鬱 ← 頑張れない
↓ ↑
休みたい 頑張るしかない
↓ ↑
人に迷惑がかかる/自分はもっとできる
・先進国の中でも日本は自殺率が高い(健康問題が47.4%。そのうちの44.4%がうつ病、統合失調症が8.8%。精神疾患で半分以上)。
・うつ病はこの12年間で3.5倍に増加
・うつ病患者に見られる症状:睡眠障害(98%)、疲労・倦怠感(90%)、食欲不振(90%)、頭痛(80%)
・アルツハイマー、癌などでのうつ病の併発が多い
・うつ病患者の2/3が5年以内に再発
【うつ病の治療法】
・精神療法、薬物療法、電気けいれん療法、光療法、断眠療法など・・・
・最初に医師が伝える、うつ病治療の7原則
(1)うつは「気の緩み」や「怠け」ではなく、治療をするべき「不調」である
(2)早い時期に、心理的な休息を取ることで立ち直りやすくなる
(3)予想される治癒の時点を告げる
(4)治療の間、自己破壊的な行動(自殺、自傷など)をしないと約束してもらう
(5)治療中でも、症状は一進一退すると繰り返し告げる
(6)人生に関わる重大な決断(退職、離婚など)は、治療終了するまで延期する
(7)服薬の重要性、副作用を告げておく
・急性期治療(6~12週)、持続療法(16~20週)、維持療法(1年~)の3つの期間に分けて治療が進められる。
・治療は1種類の抗うつ薬で最大量まで増量すべき。新規抗うつ薬を第一選択にするのが望ましい。最大4週まで抗不安薬の併用が望ましい。
【レメロンの特徴】
・作用機序:α2自己受容対(NAn)、α2ヘテロ受容体(5-HTn)の遊離促進作用および5-HT1A受容体特異的刺激作用。
⇒不眠・焦燥の強い患者に奏功。中等症~重症患者に対する第一選択薬。
(利点:BZD系の使用を減らせる)
※サインバルタ、ジェイゾロフトは間接的にドパミン↑。アモキサンはドパミンを増やす為に出すDrも。
・レメロンと三環系は投与1週間から効果は拮抗
・半減期が長い薬剤の為、退薬症状がでにくい。
・アクティベーションシンドローム(抗うつ薬の投与初期・増量時などに見られる不安・焦燥・衝動性・攻撃性・不眠などの症状)のリスク評価(対プラセボ=1とする)
相対リスク:パキシル(7.69)、ジェイゾロフト(2.92)、レメロン(0.52)
・飲みはじめから1~2ヶ月で体重増加。活動性が上がってくると体重減少もあるため、消化器症状やうつの改善による食欲増進の可能性も(但し、ジェイゾロフトやサインバルタへの変更で体重が減るらしい)。
・体重増加は3~6週―20~24週に多く発現する。
・30mg以上のからNAが出るようになるため、高用量になると眠気消失、意欲上昇を呈するPtもあり。
→30mg未満では抗ヒスタミン作用、5-HT作用が優位。
ジェネリック医薬品について
GEの定義:臨床上の有効性・安全性が同等な医薬品
・GEと先発品との相違点
物質特許 → 主薬の特許。製造方法が違っても物質が同じであれば特許の権利が及ぶ。 この特許の期限が切れることでGEが製造・販売される。
製剤特許 → 製剤の処方内容に対する特許。安定化、徐放化、口腔内崩壊錠などの目的をもった特許添加物を使用している場合、同じものを使用できない。(一般に添加物の特許は短い)
用途特許 → 適応(用途)に対する特許。同じ化合物で新たな効能効果を見つけた場合は用途特許を取得する。
製法特許 → 医薬品の有効成分の製造過程で出てくるアイデアを特許として保護。
※添加物とは:投与量において薬理作用を有さず、無害なもの
・ICH(日米EU医薬品規制整合化国際会議:日・米・EUの3極間で、新医薬品の製造(輸入)承認に際して要求される資料を調和(共通化)することによって、医薬品開発の迅速化・効率化を目指す会議のこと)に準じて試験を実施している。
・GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準 )に基づく製造施設・設備の管理を行っている。
※GMPとは:
①人による間違いを最小限にする
②医薬品が汚染されたり、品質が低下するのを防ぐ
③高い品質を保つ仕組みをつくる
以上 を目的とする安定した品質の製品を製造する為のルールを取り決め、マニュアルや実務録など記録に残すこと
・新薬の特許期限:20~25年。特許の切れる2~3年前からジェネリックメーカーは開発スタート。
・GEの承認審査に必要な項目
規格および試験方法(性状、確認試験、純度試験、溶出試験、含量試験等 )
安定性試験(加速試験、長期保存試験、光安定性試験、無包装状態での安定性試験等)
生物学的同等性→クロスオーバー法を用いてAUCとCmaxで評価。n=20前後。
※Tmax、MRT(平均滞留時間)での評価を行っていない為、経時的な動態に先発品との乖離の可能性あり。
・平成7(1995)年3月までに承認申請された溶出試験規格の設定されていない内用固形製剤 に対して平成9年から品質再評価(溶出試験)を開始。pH1.2(胃内)、3~5(低胃酸:食後)、6.8~7.5(小腸)、水での溶出性を評価。
・原薬メーカー⇒GEメーカーの場合、GMPの適合・不適合などにより供給不安定になることあり。
テバは原薬メーカーの為、供給が安定している点が、他のジェネリックメーカーに対するアドバンテージとなる。
平成24年度
アレルギー性疾患治療剤:ディレグラ
【ディレグラ錠の概要】
・血管収縮作用を有するα交感神経刺激薬の塩酸プソイドエフェドリンの配合剤である。
・塩酸プソイドエフェドリンは国内ではOTC(パブロン鼻炎錠、コンタック600プラス、ベンザブロック、プレコール鼻炎カプセルA、スカイナー鼻炎S錠、エスタック鼻炎カプセル12など)に配合されていた。
・フェキソナジン(アレグラ)は即時相(ヒスタミン)に起因する鼻汁、くしゃみ、鼻閉に奏功し、プソイドエフェドリンは遅発相(好酸球)に起因する鼻閉に奏功する。
・本剤服用45分後には効果発現(対プラセボで有意差あり)。一方アレグラは服用1時間後に効果発現。
・アレグラvsディレグラでは後者の方が有意に鼻閉に対する効果発現が早かった。
・有害事象で頭痛・不眠(α刺激作用のため)が多い。
・食後服用でフェキソナジンの血中濃度が低下(原因不明)。空腹時投与。
・頓服は不可。
・アレグラ、ディレグラの同時処方もあり得る。
・徐放化しているため割錠不可。
・稀に便中にゴーストタブレットが出ることあり。
・処方は中学生以上(12歳以上)。
※問題点:プソイドエフェドリンは覚醒剤の原料となる。実際に国内で大量の鼻炎薬から抽出したプソイドエフェドリンを元に覚醒剤の密造が行われ、摘発された例がある。
現在、プソイドエフェドリンは製剤重量の1/10以下にしなければならないと規定されている。
成人期 AD/HD 治療薬ストラテラ
・小児期のAD/HD(注意欠陥/多動性障害)の有病率は4~12%。そのうちの50~70%が成人期まで症状を持ち越す(海外データ)。
(成人期の症状と生じる問題)
多動性:過剰なおしゃべり、仕事を過剰に引き受けてしまう、落ち着きのなさ、貧乏ゆすりなど
衝動性:転職が頻繁、短気、危険運転(信号無視、スピード違反)・交通事故など
不注意:順序だてて行動できず整理整頓が苦手、業務完遂が困難、見通し・予測といった時間間隔がない、計画通りに実行できない、忘れ物・失くし物が多いなど
※成人期は特に不注意が残りやすい
生じる問題:約束を守らない、責任感がない、信頼できない、アルコール・薬物を乱用しやすい、交通事故の繰り返しなど
上記の症状や問題により、健常者に比べて以下の社会的な困難を伴い、総じてQOLを低下させることとなる。
(医療)オートバイ事故リスク50%上昇、ER受診率33%上昇
(学校・職場)解雇46%、中退35%
(社会)物質乱用リスク2倍
(家庭)兄弟姉妹の争い2~4倍増加
・成人期AD/HDでは不安障害(47.1%)、双極性障害(19.4%)、大うつ病(18.6%)などを並存することが多く、主症状としてうつ状態や不安症状等を呈することが多いため、診断には慎重を要する。
・現在、成人期AD/HDの確定診断はDSM-IV-TRに基づいて行われているが、2013年5月にDSM-Vに改訂される際、「広汎性発達障害(ひきこもり)、統合失調症、他の精神病ではないか」の項に変更が加えられる見通し。
(ストラテラの特性)
・AD/HD治療薬として世界初の非中枢神経刺激薬。
⇒それまで唯一の治療薬であったコンサータ(メチルフェニデート)は流通規制があり、管理が煩雑であるが、本剤は一般薬と同様の管理で薬局の負担↓。
・本剤により前頭前野のドパミン及びノルアドレナリン濃度が上昇する一方、セロトニン濃度には殆ど影響しなかった。
⇒セロトニンに影響しないため、離脱症状リスクがない。
・本剤により線条体及び側坐核のドパミン濃度を上昇させなかった。
⇒線条体でのドパミン濃度↑でチック、側坐核でのドパミン濃度↑で依存・乱用につながる。
・投与開始後2週目から症状改善が認められ、6週目以降から6割以上のPtで効果を実感。
⇒本剤はキレのある薬剤ではない。短期的にはコンサータの方が効果発現が早い(2~3日で奏功)が、24時間効果が持続せず、複数回投与となる上、薬物依存リスクなどのデメリットも。
・長期(48週間)投与における効果の減弱は見られず、AAQoL-29スコア(AD/HD患者の機能障害およびQOLの自己評価尺度。29項目ある。)が優位に改善した。
・主な副作用は悪心(37.4%)、口喝(10.9%)など。投与1週目のSE発現が顕著。継続投与により、発現頻度は減少する。治療のDrop率は低いものの、中止の原因は悪心が多い。また、投与量増加に伴う副作用発現はあまりない。
・3年は継続服用する。
・食後服用のほうが吐き気が少ない。初期の悪心SE克服後、朝食後分1服用が望ましい。
・通常40mg/日からスタート。40mg分1より10mgカプセル2C分2の方が悪心出にくい。
・小児でたまに幻覚を含む感覚障害の副作用あり。
・眼球刺激性があるため、脱カプセルしないよう指導すること。カプセル内容物が眼球に付着した際は、すぐに水で洗浄し、医師に相談するよう指導。
一類医薬品について
当薬局では多種の一類医薬品を販売している。
購入希望者へ対する確認事項や、薬の説明時に抑えておくべきことなど薬剤師毎にばらつきがないよう意志統一を目的として個別に検討した。
3回目となる今回をもって当薬局での取り扱い一類医薬品全ての検討を終えた。
アミティーザカプセルについて
・2012年11月22日発売の慢性便秘症治療薬(米国:2006年、スイス:2012年発売。日本は3番目)。
・1980年ラキソベロン発売以後、32年ぶりの便秘治療薬発売。
・慢性便秘症の効能を有する世界初のCl-チャネルアクティベーター。小腸からの水分分泌促進作用。
・Mgと比べてもかなり便の水分量を増やす(コレラ菌と同様の働き?)
※Cl-チャネルブロッカー=正露丸
・本剤は腸管局所にて作用を発現し、吸収された後、小腸で速やかに代謝される。
・抗うつ剤のSEによる便秘は治験で除外した為に薬剤性の便秘に対する注意事項の記載あるが、機序から見て無効とは考えにくい。
・初回投与24時間以内(平均23.5時間)に約60%の患者で自発排便あり
・薬剤耐性、効果の減弱はないため、長期に渡る慢性便秘症を改善する。
・SF-36を用いたQOLの改善も認められた。年齢差はなかった。
・主な副作用は下痢(30%)、悪心(23%)。下痢のうち約93%は軽症、約7%が中等症。
・副作用の発現頻度に年齢差なし。
・食事を多めに取ると悪心などのSEの頻度低下。
※禁忌の項に「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人」と記載あり。これは動物実験での胎児喪失を踏まえている。
〈便秘の定義:3日以上排便なし、または毎日あっても残便感あり〉
・若年層では女性が多く、高齢では男女共に高くなる。
・便秘PtはQOL低下傾向にある。活動性、労働生産性も低下。
慢性疼痛・抜歯後疼痛治療剤トラムセット配合錠について
・日本人の5人に1人が慢性疼痛(数値評価スケールNRSで5以上が3ヶ月以上続く)を有している。
・疼痛治療の満足度調査で4割が不満(痛みが取れない、納得いく説明がなかった、痛みを理解されないなど)
・慢性疼痛のうち腰痛が最多(26.6%)
・慢性疼痛治療の第一選択:NSAIDs(日米独共通)、第二選択:米独では強弱オピオイドや筋弛緩薬など幅広いが、日本では神経ブロック以外の選択肢は少ない
・オピオイドには中毒時に用いる拮抗薬(ナロキソン)、オピオイド鎮痛薬が含まれる
・トラムセット=(μオピオイド作動薬&SNRI)トラマドール+アセトアミノフェンの合剤。炎症を抑える作用はないため、炎症を伴う場合はまずNSAIDs
・NSAIDs:投与1~2週間で効果判定
⇒弱オピオイド:3ヶ月で効果判定。効果あれば継続。なければ薬剤変更
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とあるクリニックでは・・・・
・トラムセットを使用した患者の8割以上で疼痛改善あるが、3~4錠/日は必要。
・増量によるSEの発現頻度に大差なかった
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・CKD(慢性腎臓病)でNSAIDsが注意必要だが、他の選択肢がなく投与されている現状⇒代替薬としてのトラムセットが期待されている(上限4錠)
・Seの出現傾向:女性、非喫煙、痩せ型、乗り物酔いしやすい人、その他
・悪心、嘔吐、傾眠などは投与食に発現。1週間乗り切ればOK(少量スタート、プリンペラン併用などの対策)。1錠ずつの漸増でドロップ率1/10
・著効率の高い疾患:夜間痛、事故後疼痛など
・退薬症状がまれに発現するため、漸減すること
・パキシル(SSRIだが、それ以外の作用による鎮痛効果あり?)との併用もペインクリニックでは実施。
・リリカ(神経障害疼痛)は鎮痛補助薬のためトラムセットと併用可
・トラムセットは侵害受容性疼痛と神経障害疼痛、混合性疼痛の全てをカバーしているため、リリカ→トラムセットでなくてもいいのでは?との声あり
・高度の痛みに対しては強オピオイドを用いる
レキップCR錠について
・パーキンソン病はドパミン神経変性・脱落などに伴うドパミンの減少により発症
4大症状:振戦、固縮、無動、姿勢反射障害(押されると止まれないなど)
右足→右手→左足→左手など、N字または逆N字型に発症。年々症状は進行し、約5年で要介護(Ⅱ度)になる。
レボドパ+ドパミン受容体作動薬が治療の基本。前者は長期使用でジスキネジアや運動障害の日内変動を生じるリスク
高め。オフ(薬剤が奏功しない)期間あり。後者はレボドパより効果は劣るが、長期投与時のジスキネジアやオフのデメリ
ットを解消できる。
・レキップCR錠の特性
1日1回投与により血中濃度を24時間良好にコントロール可能。
進行期パーキンソン病患者において、2.88時間のOff時間短縮効果あり。
・レキップCR錠の薬物動態
進行期(offがある)にはL-ドパを3~4、4~5、5~6回/日に変更。ジスキネジアある場合は投与回数↓、ない場合は
投与回数↑。L-ドパでも奏功しない場合は手術。
・レキップCR錠の漸増投与方法
ジスキネジアは中枢ドパミン濃度の間欠的変動によって生じやすくなる⇒濃度を一定にすることが有効
・他のパーキンソン病治療薬との比較
・レキップ:D2受容体に作用し、ドパミンに近似。幻覚に効かせたい時に
・ビ・シフロール:中枢に奏功しやすい。鬱に効かせたい時に。傾眠。
・パーロデル:D1受容体に作用。心エコーが必要なため、非主流に。
・抗コリン薬:精神症状よりも自律神経症状に効かせる目的が多い。
経口夜尿症治療薬ミニリンメルトOD錠
1.夜尿症の定義:5~6歳を過ぎても夜尿が続くこと。治療は小学校入学以降より行うのが一般的。
2.夜尿症の病型分類:多尿型、混合型、その他(膀胱型・解離型を含む)
3.夜尿症の治療手順
4.デスモプレシン製剤の概要
5.夜尿症に対するデスモプレシン療法
・デスモプレシンによる有効率は多尿型で82.3%、膀胱型、混合型では20~30%
・効果良好であれば投与継続。3ヶ月毎に休薬して夜尿の状態を確認。一般的な治療期間は2~3ヶ月
6.ミニリンメルトOD錠のメリット
・経口剤のため服薬が簡便
・水無服用可
・宿泊行事での携行が容易
・アレルギー性鼻炎患者でも吸収低下の懸念なし
・点鼻製剤に比して低Na血症(水中毒)のリスクが少ないとの報告あり
経皮吸収型 持続性癌疼痛治療剤フェントステープ
・他のオピオイド鎮痛剤からの切り替えのみ使用可。
・使用開始3~5日以降に血中濃度安定。緊急的には坐薬や即効性のある内服薬を使用。
・従来からのフェンタニル(3日に1回貼り替え)と比べ、1日1回貼り替えの本剤のメリット
日本人は毎日入浴することを好むため(入浴に伴う体温上昇により、薬剤の吸収増)
3日タイプは3日目に効果減弱
・残薬管理の問題:現在は調剤後の薬剤は患者の資産であるとの見地から、各自廃棄でOK
・単位面積当たりの薬剤量が一定 ⇒ 用量は面積に比例する
一類医薬品について
当薬局では多種の一類医薬品を販売している。
購入希望者へ対する確認事項や、薬の説明時に抑えておくべきことなど薬剤師毎にばらつきがないよう意志統一を目的として個別に検討した。
睡眠障害について
①寝具及び睡眠温熱環境が及ぼす睡眠への影響
・睡眠に最適な温熱環境は季節・寝具・個人によって異なる。裸で寝るなら29度が最適。それより高くても低くても睡眠効率は低下
・健康に生活していても、夏は他の季節に比べて中途覚醒が増え、睡眠効率低下
・扇風機の風は足元へ、エアコンからの冷風は直接体に当たらない位置へ送風するのがよい
・熱いと感じたら、我慢せずに最初から冷房を入れるべきだが、タイマー設定は午前4時ごろまでとする
・冷却枕で頭部を冷やすと体温調節を補助して睡眠を改善する
②運動や入浴による睡眠前体温変化と睡眠改善
・睡眠前の運動(楽に続けられる程度の運動)や入浴による一過性の身体加温は睡眠の心理的評価を改善する
・睡眠前の適度な運動や入浴はその後に大きな熱放射過程を形成し、寝つきを改善する
・入眠前の熱放散過程は、その後の徐波睡眠の出現過程を調節している
・徐波睡眠が睡眠の前半に集中して出現するような徐波睡眠の出現分布は快眠の生理的指標のひとつである
※光刺激を受けた15時間に睡眠誘発される⇒コンビニの照明が日光刺激に近い
薬歴管理の申し合わせ
当薬局ではRecepty NEXTを使っての薬歴管理を実施しているが、各スタッフによって入力内容や各種機能の使用状況が異なるため、統一化を図るために改めて作業手順などを確認。
とりわけ今後は以下の事項に留意して作業することとした。
・基礎的9項目の確認の徹底
・DSU情報を薬歴に反映させること
・チェック薬品、副作用歴、アレルギーなどは随時更新し、古く実情に合わない内容については削除する
間違いのない調剤の為に性格特性を知りヒューマンエラーを防ぐ!
・人間はミスを犯す生き物である ⇒ 薬剤師の仕事にはミスが起きやすい特徴的な背景あり
主な調剤エラー原因:薬の数え間違い、規格間違い、薬の取り違いなど
・これまでのヒューマンエラー予防対策:
医薬品の配列や薬品名の明示など外的因子への対策
薬剤師の専門知識や技能を高めるための教育
今後は個々人の性格特性の把握やそれに応じたヒューマンエラー予防のための教育が必要
・エゴグラムによる性格特性分類
頑固な親父タイプ(CP):責任感強く、自分へ厳しい
過保護なお母さんタイプ(NP):思いやり、やさしさ
クールな大人タイプ(A):客観性、現実処理能力
無邪気なお子様タイプ(FC):自己主張の強さ、明るさ
素直なよい子タイプ(AC):素直さ、依存性、協調性
上記エゴグラムとヒヤリ・ハットの頻度の関連性から、自らの性格特性を補う予防策を探り出し、より効率的なヒューマンエラー予防を実現する。
抗うつ薬パキシルCR(2012.06.22発売)
うつ病治療の現状
・米国では近年承認された抗うつ薬の約7割がコントロールドリリース型DDS製剤である。
・本邦ではコントロールドリリースタイプの抗うつ薬はパキシルCR錠が初めての製剤。
・高齢者のうつ病患者の増加。
※SSRI:不安、SNRI:意欲向上、NaSSA:不眠・増強(多剤に追加)
うつ病のまとめ
【単極性と双極性の違い】
単極性:うつのみ。数ヶ月症状が出ては治まるの繰り返し。
双極性:うつ~普通~躁の繰り返し、あるいは「普通」の状態がない。
単極性の特徴 双極性の特徴
・入眠困難、睡眠の減少
・食欲・体重↓
・発症が遅い(25歳以上)
・現在エピソードが半年以上
・家族歴なし
・過眠、昼寝の増加
・過食
・精神症状、鉛様麻痺など他の非定型うつ症状
・発症が早い(25歳未満)
・5回以上のうつ病
・家族歴あり
※60%の双極性うつ病患者は単極性と診断されたことあり
※※不安障害・統合失調症との診断をされたこともあり
10年以上かかって正しい診断をされた人が最も多い(35%)
【双極性うつの問題】
・自殺既遂率:一般 0.014%に対し、双極 0.4%
・自殺企図率:単極の2倍
・5年で9割の患者が気分エピソード再発
【うつ病の治療継続について】
うつ病の治療継続率は30.5%と低く、このため以下のような問題が生じる。
・寛解率が有意に低い
・再燃・再発リスクが77%↑
・自殺企図↑
(抗うつ薬治療中止の要因)
医師側の要因 コミュニケーション不足
患者ニーズに合致しない処方
用量不足、不充分な治療期間
患者側の要因 経済的困難
治療意欲の低さ
症状が完全に治ったと早計な結論を出す
症状緩和を感じない
薬側の要因 有害事象
効果発現の遅さ
用量調節スケジュールの複雑さ
合併症状に無効
(うつ病の治療過程)
・6~12週:急性期治療(寛解まで)
・4~9ヶ月:持続療法(寛解~安定)
・1~2年:維持療法(安定~治癒)
パキシルCR錠について
・本邦初のコントロールドリリースタイプの抗うつ薬
・腸溶性フィルムコーティングと徐放化により、血中濃度の急激な上昇を緩和することで副作用を軽減
・AUCを可能な限り維持することで、速報性製剤と類似の臨床効果を期待できる
・パキシルCR錠はパキシル錠(速放錠)と同等あるいはそれ以上に経時的なうつ症状を改善した
・パキシルCR錠はパキシル錠(速放錠)に比して、治療初期(開始後1週)の悪心発現率を有意に低下させた
・パキシルCR錠はパキシル錠(速放錠)に比して、治療継続に貢献した(180日後の治療継続率は前者で55%、後者で43%)
※治療初期の副作用を感じる患者は、中止時の有害事象を感じる傾向がある。
ハイリスク薬の薬学的管理・指導について
当薬局では向精神薬を中心として多くのハイリスク薬を投薬する機会が多い。そのため、薬剤師としてそれらハイリスク薬の適切な薬学的管理及び患者様の薬物治療に対する適切な理解とモチベーションに寄与するべく、ハイリスク薬に関する知識・理解を深めることを今回の目的とする。
特定薬剤管理指導加算算定基準となる指導内容
特定薬剤管理指導加算は、ハイリスク薬について処方箋受付時に下記[1]~[4]について確認し、過去の薬剤服用歴の記録を参照した上で、[5]~[6]について説明し、必要な指導を行った場合に算定する。
1.患者の服用状況
2.効果の発現状況
3.注意すべき副作用に係る自覚症状の有無及び当該症状の状況
4.注意すべき併用薬の有無
5.服用に際して注意すべき副作用やその対処方法
6.服用及び保管に係る取り扱い上の注意事項
向精神薬には最大投与量が設定されているもの、適応症によって用量設定が異なるものなどがあり、服薬指導の際には患者が服用方法を把握できているかを確認し、継続的に服薬コンプライアンスを確認することが必要。
悪心・吐き気、眠気・ふらつき等の初期に発現しやすい副作用は、効果発現より早く出現するため、あらかじめ対処法とともに説明しておくことが必要。
資料中にある薬剤ごとの指導項目、注意点とその対処法などを照合する。
ハイリスク薬の処方が不適切な場合の処方エピソード(抜粋)
【ケース1】てんかんと推測される患者へのルジオミール処方
三環系・四環系抗うつ薬では過量投与あるいは常用量投与においてもてんかん発作の発現が報告されている。
本ケースではこれまでの治療で抗てんかん薬であるテグレトールを使用している患者に対してルジオミール(三環系抗うつ薬)が処方されていることから、処方医に対して疑義照会を行った。
医師の返答は、テグレトールは三叉神経痛を目的とした使用であり、患者はてんかんなどの痙攣性疾患の既往はないことが確認されたため、処方変更はなかった。
【ケース2】糖尿病患者に禁忌であるセロクエル処方
セロクエル(フマル酸クエチアピン)は著しい血糖値の上昇から糖尿病の患者及び糖尿病の既往のある患者に対しては禁忌となっている。
本ケースでは糖尿病治療薬のファスティック錠、メルビン錠を服用中であることから、患者が糖尿病であることが明らかである。そのためセロクエルの使用は中止することが勧められる。
またその代替薬としては非定型抗精神病薬でもセロクエルと同様の警告、禁忌、慎重投与、重要な基本的注意に関する情報が示されるジプレキサは不適切。リスパダール(リスペリドン)においては糖尿病患者およびその既往歴、家族歴、危険因子を有する患者には慎重投与することとの記載があるのみで使用可能であるが、血糖値上昇、糖尿病悪化、ケトアシドーシス性昏睡などの症例もあるため十分な注意が必要。
【ケース3】突然の禁煙でジプレキサの血中濃度上昇⇒副作用惹起の可能性
喫煙はCYP1A2を誘導する。CYP1A2で代謝される薬剤の服用中に突然の禁煙や急激な減煙を行った場合、喫煙による代謝酵素の誘導がなくなるあるいは極端に減るため薬剤の血中濃度が上昇し、これまで出ていなかった副作用が発現することがある。
喫煙の開始、停止時にCYPシステムがどのような速度過程で変化するかは明確ではないが、タバコ成分中の多環芳香族炭化水素の肝臓への作用は3~6時間以内に起こり、24時間以内に最大効果に達すると言われている。
オランザピンやテオフィリン、フルボキサミンなどの薬剤を服用中の喫煙患者が禁煙を試みる際には、薬物の種類・タバコの種類・喫煙量などによって違いがあるため個々のケースで観察と解析をしつつ漸減していくことが勧められる。
不眠症治療薬ルネスタ
【睡眠を取り巻く現状】
高等動物ほどREM睡眠が発達(記憶の定着に寄与) 。
90分周期×3~4回で覚醒。
成長とともにREM睡眠は減る→記憶力の低下に影響?
人口の20%はあまり眠れない、37%は寝つきが悪い(H19年データより)。
眠る機会があるにもかかわらず寝られない、日中障害がある→睡眠障害。
入眠障害、中途覚醒が多い。高齢者は特に後者が多くなる。
【ルネスタの特徴】
ゾピクロン(アモバンほか)を光学分割して得られた、薬理活性の大部分を有するS体のみ。これによりラセミ体でよく見られた苦味の副作用を大幅に軽減。但し主な副作用として味覚異常(軽度の苦味)が36.3%に見られた(国内の並行群間比較試験において)。
日本でよく使用されているマイスリー(Tmax=約50min、T1/2=約2hr)、レンドルミン(Tmax=約1.3hr、T1/2=約7hr)との比較では、それぞれ中途覚醒や持ち越し効果などの懸念があるが、本剤はTmax=1hr、T1/2=5hrと効果発現も早く、作用時間もマイスリー・レンドルミンの中間で使いやすいと考えられる。
また、本剤は第3種向精神薬であるため、記録義務がなく、院内・薬局での管理もしやすい。
【服用に際する注意など】
ゾピクロンの効果を実感しつつも、その味覚異常(苦味)により服薬を断念せざるを得ず、さらに他の眠剤で十分な効果を得ていない患者に対しての有用な選択肢となりうる。
実際の投薬時にはアルコールとの併用に関する注意喚起(記憶障害が出やすい)や反跳性不眠・退薬症候を防ぐため、医師の指導の下に徐々に減薬→断薬を行うよう説明する。
ナルコレプシーについて
代表的な過眠症のひとつ。日中に突然、耐えられないほどの激しい眠気に襲われ眠ってしまうことが繰り返される慢性疾患。
多くは思春期(14~16歳)に発症。国内の潜在患者数は推定20万人だが、実際に治療を受けているのは数千人。
【ナルコレプシーの症状】
日中の耐え難い過剰な眠気や居眠り
情動脱力発作
入眠時幻覚
睡眠麻痺
その他(夜間熟眠障害、自動症など)
【ナルコレプシーの原因】
発症原因は全て解明されてはいないものの、ナルコレプシー患者では白血球抗原タイプのHLA DR2が陽性であることが判明。
また、食欲と睡眠に関するホルモンのオレキシン濃度が測定できないほど低下していることも判明している。
【治療】
2012年現在の第一選択薬はモダフィニル(商品名:モディオダール)。これまで使用されてきたメチルフェニデートやペモリンに比べて依存性がないこと、肝臓への負担が少ない上、半減期が比較的長く(12時間)、朝食後1回の服用で約8時間効果が持続する点がメリット。
メチルフェニデート(商品名:リタリン)は半減期7時間程度、実行時間は4時間ほどで、日中の服用回数が複数に及ぶ上、不正使用・乱用の問題から登録医のみが処方可能。他剤で効果が得られない場合や副作用で他剤が使用できない場合に限って使用。
ペモリンはモダフィニル同様1日1回服用で良いが、肝臓への負担が高い。
ナルコレプシーでは夜間の睡眠障害を伴っていることが多いため、夜間の睡眠を確保するために必要に応じて睡眠導入剤、睡眠薬、抗精神病薬なども用いる。
【ナルコレプシーと喫煙】
ナルコレプシー患者の喫煙者では、火傷や衣類・家具などの焼け焦がしが日常的に起こっているが、眠気の軽減目的で喫煙しているケースが多いため、健常人に比べて禁煙が困難であると思われる。